第20章 君をずっと思ってる
「母ちゃ~ん。潤も行きたいって言うから連れてくよ~!二個買えるしさ〜」
いやいや、俺、行きたいとは一言も言ってね~し///
さっき、俺を殺そうとした狂気のドアを開けて、智がそう叫ぶと、中から母さんの声が聞こえた。
「じゃあ、お願いね~♪帰りにたい焼き買ってもいいわよ~♪」
たい焼き買ったら、安いトイレットペーパー、わざわざ買いに行く意味なくね??
胸に浮んだ素朴な疑問は、気付かなかった振りして、俺は、久々に智と肩を並べて歩き出した。
………
小学校の時、毎日こうやって並んで通ったな~
「小学校の頃、思い出すな…」
「あ……」
「何?」
「いや…何でもない…」
俺が思ったことを、智がそのまま言ったから、びっくりした。
「…そうだね~…懐かしい」
「うん…潤、泣き虫だったからな~…西野さんとこの犬が離れちゃって跳びかかってきた時なんか、大騒ぎでさ…」
「いや、だってあれはマジで怖かったから…」
「やだやだっ、あっち行ってよぉ~///って泣いてさ…翔くんの背中にしがみ付いていた…」
「そうだよ!!智、笑ってるだけで、助けてくれなかったじゃん!結局助けてくれたの、翔くんだし…」
「…そうだね~、ごめん…」
……………
……智と、
翔くんの話する日が、また来るなんて。
あの日以来、俺と智の間では、翔くんのことは、名前さえも、禁句だったから…
「…いつも、3人でいたよな…」
「…そうだね…」
ホントにそうだ。
ずっと3人で、兄弟みたいに育ってきた。
その関係を壊したのは、俺だ。
智にとられる前に、って…
智の気持ちに気付いてたくせに、
出し抜いたんだ、俺…
翔くんを…
ふたりの翔くんを、
独り占め、したんだ…