第20章 君をずっと思ってる
俺たちは、そのまま身体を洗い、
湯船に並んで浸かり、風呂を出た。
泣きそうだった潤は、
見た目には落ち着きを取り戻し、親父さんが予約してくれた旅館の話をした。
芦ノ湖が凄く綺麗だったこと、
食事がどれも旨かったこと、
部屋付きの露天風呂が気持ち良かったこと…
「今度、翔くんと行きたいな~…って、ずっと思ってたんだ」
「行こうよ!俺、車出すからさ~…部屋に露天風呂が付いてるとこなんて、やりたい放題じゃん!」
「ば~か…」
そんな他愛もない話をして、
潤はやっと笑顔になった。
「おいで…」
部屋に戻り、ベッドに腰掛けて潤を呼ぶと、
潤は、暫く俺を見つめたまま、少し悲し気に瞳を揺らしてから、俺の隣に腰掛けて、
肩に凭れかかって来た。
腕を回して肩を抱き寄せれば、
「翔くん……」
潤は小さく俺の名を呼んだ。
それきり何も言わない
潤……
何が起きている?
潤の中で…
聞いてやりたいって思う気持ちと、
聞くのが怖いという気持ちが入り交じり、
俺は何も言わず、肩を抱いた手のひらに力を込めた。
ここに引っ越してきて、潤の家族と出会った。
穏やかで大人しい智くん、
少し激しいけど、正義感があって優しい潤、
ちょうど二人の間の年齢の俺も、
3人兄弟のように育ってきた。
だから、知らない事なんかないって、
そう信じていたのに…
何も分かってなかったんだと、改めて知った。
一見、幸せに満ちたように見える家族にも、
誰にも分からない闇がある…
それは、家族以外の人間が、
無暗に踏み込んでいい物じゃない…
それなのに、俺は…
「翔くん…手…」
「ん??」
「…手…繋いで、寝ても…いい?…」
「いいよ、もちろんだよ…寝よ?」
「ん…」
俺たちはベッドで身体を寄せ合い、
腕を絡め手を繋いだ。
その夜、俺たちはそのまま眠りについた。
ただお互いの体温だけを分け合いながら…