第20章 君をずっと思ってる
「ちゃっちゃっと入っちゃおうぜ~♪」
「……」
無駄に明るい俺に比べ、潤は無言で服を脱いだ。
以前なら、『照れてんのかぁ~?』なんて言って、
脇腹くすぐったりする場面だったりするんだけど。
今夜の潤は、そんな雰囲気じゃなくて…
張りのある、透明な肌はいつもと変わらないのに、その背中は、妙に儚げで…
今にも消えてしまいそうな風情…
「潤!!」
俺思わず背中から潤を抱き締めた。
「翔くん?」
急に密着した肌が、何とも言えない生々しさを連れてしまい、焦って手を離そうとした。
すると潤は、胸に巻き付いた俺の手首をぎゅうっと握りしめ、消え入りそうな声で、
「……ちょっとだけ、こうしてて…」
と言った…
潤……
お前の不安を、俺が引き受けてやりたい…
抱き締めた腕から、
密着した全身から、
潤の不安が
俺の心を侵食してくる。
その不安の正体がなんなのか、
俺は知っている
ずっと近くで
なんなら、その不安を連れて来たのは、俺自身だと言っても過言ではない。
もしかしたら、どちらか一人がいなくなる可能性もあると知り、
正直、死ぬ程後悔した。
何で余計なことを!って……
自分の浅はかさを悔いたことか。
だけど……
堰は切られた。
今まで、硬く拗れていた結び目が、
ゆっくりと緩んでいく……
そしてその先にあるものは。
潤は当人だから…
俺以上にそれを感じているはずだ。
母親に優しくされればされる程、
愛に餓えた子どものままだった自分が、
やっとゆっくりと立ち上がる。
目を開けて、しっかりと前を、
その先の未来を見つめようとしている。
そしてそれは、
喜ばしいことのはずなのに、
本来あるべき姿のはずなのに、
どうしても…………
強く抱き締めた潤の肩が
微かに震えていた。