第19章 冷酷な真実に…
「露天風呂付きですので、何時でもお好きなときに入りください…大浴場も24時間ですので…」
「露天風呂付きって…」
お茶を入れてくれた中居さんが出て行ってしまうと、
俺はため息交じりにそう言った。
「ホントにね~。二人で入る訳にも行かないし…
パパの冗談かしら??」
パパ…って、父さんも知ってるんだ、このこと。
「潤とふたりで行きたい、って言ったら、パパが取ってくれたのよ、ここ…伝手があるんだって~」
「へえ~…」
父さん…どう思ってるんだろう?
窓から外の景色を眺めていたら、
いつの間にか浴衣に着替えて来た母さんが、
「潤、ご飯の前にお風呂入ろう」
と言った。
自分はタオルやらなんやらすっかり用意して。
「うん…俺も着替えてから行くよ」
「分かった~、先行ってるね」
………飯まで、2時間もあるし、
あの人、当分帰って来ないだろうな~
だったら……
俺は浴衣や着替えを用意して、部屋の露天風呂に入った。
ヒノキのいい匂いがするその風呂からは、
青紅葉の向こう…芦ノ湖の景色が一望出来た。
「はあぁ~……」
首まで浸かると、お湯が溢れて零れた
気持ちイイ…
大浴場もいいけど、こんな浮世離れした場所で、ひとりゆっくり露天風呂に浸かるのも、初めてかも…
今度、翔くんと二人で……
翔くん…
こんな凪いだ気持ちで、母親と一緒にいる俺。
怒りを通り越した諦めや、憤り……
俺にとって、親との関係は全て、
その上に積み上げられていた。
それが、今、ゆっくりと解かれていく…
拗れていたわだかまりが無くなった時、
俺の存在意義は、どうなっていくんだろう…
親にも、何も遠慮しなくていい、
我慢しなくていい…
そうなったとき…
俺は…
Jと代わるんだろうか??
代わったとしたら…
俺は……
いなくなるんだろうか……?
翔くん…
俺、
俺さ……