第4章 揺れる想い
その日も、メイド喫茶でいやいやコーヒーやジュースを出していた。
…あ~、早く終わんないかな~
そんな風に思いながら奥の椅子に座って気配を消していると、岡田が、
「お~い、大野!これ、3番に持ってって~」
「ほ~い…」
仕方なく作り笑顔を浮かべてケーキセットのお盆を片手に、言われた3番に行った。
「お待ちどうさまでした~…あ…」
そこにいたのは、欧米文学の助教授、坂本先生だった。
俺は講座を取っていないから直接は話したことなかったけど、この人、有名だった。
「やあ、ありがとう~、君、名前は?」
「…大野です…」
「大野?下の名前は?」
「…智、です…」
「さとし…まあ、智くん、座ってよ…」
坂本先生は自分の横に座るように促した。
この人が有名な訳……
それは、坂本先生はゲイなんじゃないかって、噂があったからだ。
まあまあの年齢だけど、独身だし、見た目の可愛らしい男の子を部屋に呼んでいるという噂が絶えなかった。
…ちくしょう~///岡田のやつ、分かってて俺を…
「智くん?君、小柄だよね~…ホントに女の子みたいだよ…」
そう言いながら、俺の太腿にそっと手を乗せて来た。
全身を悪寒が走り、耳朶の産毛までもが一気に総立ちした。
気持ち悪くて、言葉が出ない俺に、
「案外、ホントに女の子だったりしてね~…」
そう小声で言いながら、あろう事か、太腿から腹の方に滑らせた手で、俺の股間を撫でて来た。
「なっ///」
慌てて立ち上がる俺に、坂本先生は、
「大丈夫?君…顔が真っ赤だよ…」
と、ほくそ笑んだ。
「し、し、失礼します!!」
俺は、大股でキッチンの中に走り込んだ。
そんな俺を迎えた岡田たちは、大爆笑、腹を抱えて泣き笑いしていた…