第4章 揺れる想い
「智〜、母さんもう出掛けるから。
戸締まり忘れないでよ!」
「はーい、分かってるよ〜」
いつまでたっても子ども扱いで、ホントにやんなるよ…
さて。
俺もそろそろ出掛けなきゃ。
俺は乾いたメイド服を畳んでリュックに仕舞うと、玄関でスニーカーを履いた。
ドアノブに手を掛けようとした瞬間、それが外側に開いた。
「わあぁぁ///」
「あ……」
潤だった。
「びっくりしたぁ〜」
「それはこっちの台詞だよ!今帰りって、遅すぎない?」
「あ、うん…寝過ごした…」
そう言って頭を掻くけど、どこか嬉しそうで…
「翔くんと一緒?」
「うん、まあ…」
ニヤけちゃってさ。
朝帰りって、全く……
「母さん怒ってたぞ!連絡くらいしろよな〜」
「……うん、分かったよ…俺、寝るわ…」
そのまま階段を上がっていく、潤の背中を見送ってから、俺はドアに鍵をかけた。
…………寝過ごしたってさ……
どんだけ夕べ、疲れてたんだよ……
あいつら、ホントに……
………………
アホくさ///
翔くんと一緒にいる潤の、ベッドでの甘い時間を、
ちょっとだけ、想像しそうになった俺は、頭を振って、浮かびそうになった映像を追い出した。
…………
『…智くん……』
目を強く瞑ると、優しそうな低音で俺の名を呼ぶ翔くんの顔が、弾けて消えた。
俺は、玄関の鍵をかけると、駅までの道を走り出した。