第19章 冷酷な真実に…
【智】
「智…ちょっといい~?」
「えっ?あ、うん…どうしたもの?」
部屋で課題のレポートをしていると、母ちゃんがやって来た。
改まって部屋まで来て、何の話かと思ったら、
「智…明日、母さん、潤と温泉行ってこようと思ってるの…」
「温泉??潤と??」
意外だった。
母ちゃんが、潤となんて…
「うん…だから智は、留守番お願いね…」
「えっ??ああ、もちろんいいけど…
潤と二人って、なんでまた…?」
俺の質問に、目を反らせ、唇を少し噛んでから、
「潤と二人の時間を過ごしたいのよ…
潤にはずっと、いい母親じゃなかったから…私…
そんなことで、許してもらえるなんて、思ってないけどね~…」
「そっか…そうなんだ…
でも、潤は行くって?」
「うん…始めは変な顔してたけどね…」
そりゃそうだろうな…
母ちゃんが、そんなこと誘って来たら、
潤は『何だろう?』って思うだろうし…
「父さんもいないし、ひとりだからご飯も用意していかないわよ~?」
「おっけ。何でも食べるから…
温泉ってどこ行くの?」
「箱根よ~…潤が運転してくれるって…」
「へえ~…」
ふたりで、そんな相談してたなんて…
何だか想像できないけど、
……嬉しかった。
母ちゃんは、小さい頃から潤には冷たいっていうか…俺と、あからさまに差をつけるから。
俺も困ったし、嫌だったけど。
『潤にももっと優しくしてよ』
小学生の時に、一度だけ、そう言ったことがあるけど。
母ちゃんは、
『優しくしてる』って…
『でも…』っていうと、凄い怖い顔したから、それ以上は言えなくて。
それ以来、潤のことは言わなくなってたんだ。
子どもながらに、なんだか、
触れちゃいけない部分だって気がしたんだ…