第19章 冷酷な真実に…
それから俺は、潤と一緒に家に帰った。
でも、ふたりの間に会話はない…
ただ並んで歩くだけ。
………どんな言葉を掛けたらいいのか、分からないんだ。
Jが潤に変わって消えた訳は?
この後のことを、俺に託した、って…
そういう事なの??
俺には分からなかった。
ずっと潤だって思っていたのが、本当はJで…
Jが潤を演じていたのか?
Jが潤なのは、分かっていたけど。
それがこんなに複雑だったなんて。
しかも……
潤の多重人格症を治療するという事が、
潤を殺すことだったなんて。
それはダメだ。
どうしてもそんなことは避けなきゃ…
どうしたらいいんだろう?
「…潤…あのさ…」
「翔くん、次は来週の金曜日だよね?」
俺の言葉は、潤のわざとらしく明るい声に打ち消された。
「あ…うん…でも、嫌なら行かなくっても…」
「翔くんも一緒に来てね」
「潤……でも…」
家の前まで来て、潤は立ち止まって俺を見た。
潤の目は、不安げに揺れていて…
俺は胸がぎゅうっと締めつけられた。
「翔くんが側についていてくれれば、俺、
…俺は、大丈夫だから…」
「潤…お前…」
潤は精一杯の笑顔で、
「じゃ、またね…翔くん…」
そう言って手を上げた。
「じゃ…また…」
俺も同じように手を上げると、潤は背中を向けた。
見送る俺を、一度も振り返ることなく、
潤は玄関の中に消えた。
いつからか、潤を守るのは俺だって、
そう思って生きてきた。
なのに……
これじゃ、守るどころか…
潤が消えたドアを、いつまでも見つめていた。
この後…
俺たちはどこへ行くんだろう?
このまま……
今まで通りで…
っていう訳にはいかないんだろうか?
脚が……鉛のように重い。
どこからか、夕ご飯の魚を焼く匂いが漂ってきても、俺はずっとその場から動けずにいた。