第19章 冷酷な真実に…
東山先生は、今度ははっきりと俺の方に身体を向けた。
「翔くん…難しいよね?この病気は、ひとことでは言いきれない、答えは一つじゃない…そんな病気なんだ」
「……はい…」
先生はJの隣に椅子を並べ、
俺に、そこに座るように促した。
おずおずと勧められるまま椅子に腰かけ、
Jの方を見ると、Jは初めて見せるような穏やかな優し気な瞳で俺を見つめていた。
「……J…」
Jは小さく頷いた。
話を続けるよ?
俺たち二人を並べて、話し始めた。
切り離された交代人格は、
潤とJのように、同世代同性のこともあるが、
中には幼い子どもになり、片言で話したり、
別の性になって現れる場合も多いという。
乱暴だったり、暴言を吐き続ける…
なんていうケースも少なくはない
「で、だ。
ここに来た…私のところに来たということは、
治療するということ…
治療、すなわち『人格の融合』を最終的な目的とする、
という事で進めていきたいと思っている
翔くん、それがどういうことか分かるかな?」
「どういう?…というと…」
先生が何か重要なことを言おうとしているのを、
本能で感じとった俺は、
震える腕を、もう片方の手でぎゅっと掴んだ。
「うん…まあ、いずれ分かることだし、Jはもうそれを分かっているから、回りくどい言い方は止めよう」
先生はここで一度言葉を区切って、Jを見た。
Jは、顔色一つ変えずに先生を見ている。
「つまり、どうなるのか、まだ分からないが、
可能性として高いのは、
『人格の融合』がスムーズに行われると…」
「行われると……?」
「潤くんはいなくなる」
………
えっ……?
潤が……いなく、なる?
世界中の全ての音が、一瞬にして消えた