第19章 冷酷な真実に…
欲しいと願う愛情を得られない……
どんなにもがいても、
手に入らないどころか、
どんどん届かないところへ逃げてしまう…
何もしない智くんは、
ただのほほんといるだけで
あんなに愛されているのに……
次第に…潤くんの心は壊れて行った
本来の、我儘に、思うように生きたいと願う…
その本質を捻じ曲げて、
いい子でいなければ愛させないばかりか、
家の中で、自分の居場所さえなくなってしまう…
理由は分からないなりにも、
本能でそれを感じ取っていた少年は、
自分を偽ることでしか、
その解決方法を知らなかった……
『いい子なんかじゃない』
『本当の僕はもっと激しくて』
『もっと自由で』
『奔放で』
……………
思うがままに振る舞うことが出来ないジレンマが、幼い少年に圧し掛かる
その強いストレスが、
新しい人格を生んだ……
抱き締めて欲しい…
愛されたい……
満たされない想いを
いつも追いかけていた背中を…
生まれた新しい
もう一人の少年……
『潤』
………そう
作りだされた人格は、
『潤』の方…
本来持って生まれたのは、
『J』
本当の姿は、Jの方……
母親の愛情なんかに縛られたくない
そんなものは必要ない…
そう言い聞かせても、本当の自分はそれを狂おしいほどに欲する…
ならば……
『J』は女々しい、淋しがり屋の『潤』の人格を切り離した。
普段『潤』として生活しているのが、主の人格のように思うが、そうではなく。
日に数時間現れていた『J』の方が、主人格だったのだ。
主人格の方は、交代人格の間の記憶がないのが普通だが、潤とJの場合はこれが逆だった。
だから、切り離された『潤』は自分が『J』として行動している時の記憶を持たない……
「……つまり、それって…どういう…」
のどがカラカラで張り付いて、
上手く声が出ない……