第19章 冷酷な真実に…
【翔】
なんで??
そんなに二人して神妙な顔をして、
しかも、潤とJのことなのに、俺に必要以上に気を使ってる訳って…いったい…
でも、知りたい…
それがどんな事実だったとしても。
知らなければ先には進めないから……
『俺も知りたいです』
そうはっきり言うと、東山先生は深く頷いた。
Jは、なんの気持ちも映さない、
無表情で俺と先生を見つめている。
俺はここでは、いつでも傍観者だった。
だって、言い方は違うけど、俺には関係ない…
関係ないことも無いけど、
でも、潤の家の中のことは、正直俺にとっては、
『お隣さんの家庭の事情』
これが、事実。
ただ、潤と…智くんもかな?
そしてJと…深く関わっている俺にとっては、『お隣さんの』とも言ってられないんだけど。
だけど。
今までの先生のカウンセリングの時は、
部屋の隅で、あくまでも『立会人』的な立場だった。
でも今は……
今回は、俺に…先生もJも、
必要以上に気を使っていて…
それが違和感だった。
東山先生は、また話し出した。
「潤くんは、美穂さんに愛されたかった…
兄である智くんと同じくらいに…いや、きっとそれ以上に、母親からの愛情に飢えていた」
東山先生の話は、誰かに語り掛けるとか、
質問するいうよりは、
もう決まり切った物語を紐解く様な…
そんな口調だった。
Jも何も言わずに、その口元を見つめている。
「愛されたい…だから、一生懸命に頑張ったんだと思う…潤くんは、大人の事情は知らないけど
何も頑張らなくても愛情を受けている智さんと、自分との差を、本能で感じ取っていた…」
それは、まだ幼い潤くんにとっては、酷な真実だったに違いない
どうして??
なんで??
俺はこんなに頑張っているのに!!
きっとそう思っていただろう…
愛されたいと願えば願う程…
美穂さんの気持ちが自分には向かない…
そればかりか、その瞳の奥に、
拭いきれない憎しみの色を観たとしたら…?
「憎しみ……」
言葉が出ない。