第19章 冷酷な真実に…
Jはじっと先生を見る。
その表情には、さっきまでの不安そうだった潤の気配はどこにもなくて…
明らかに別人だった。
J………
人は、こんなにも簡単に、別の人格に変わるんだと、
頭の中では理解し、納得していたはずなのに。
その衝撃的瞬間を目の当たりにし、
俺は身を乗り出した。
部屋の真ん中にいるJ…椅子から身を起こし、
東山先生と見つめ…睨み?…あっている。
『J』
そう声を掛けたい気持ちを、
膝の上の拳に、グッと力を入れて耐えた。
考えてみたら今まで、Jと会うのは、いつも夜だった。
太陽が真上にあるこんな時間に、Jは潤と入れ替わったりしていたのだろうか?
「J、君に聞きたいことがあるんだ…正直に話して欲しい…」
「…正直にね~…」
「そうだ。それがどんな内容でも、君はここで…翔くんが見守っているこの場所で、語る義務がある」
その言葉に、Jは初めて、固唾を飲んで事の成り行きを見守っている俺を見た。
J……
絡み合う視線…
「翔…今日はやけに爽やかな格好してるんだな~…そういうのも可愛いよ~…
いつも俺に会いに来るときは、無理してる感じなの?今はどっから見ても、真面目な大学生だ…
VIPで乱れる翔とは別人みたいだね~♪
もっと、もっと…って、可愛い声で強請る翔…」
「J!!」
堪らず立ち上がって大きな声を出した。
先生の前で…そんなこと…
「二人は、愛し合ってるんだね…」
先生は、穏やかな声で、Jに向かってそう言った。
「……分かったようなことを…」
Jの苦し気なつぶやきに先生は、
「ずっと、翔くんと一緒に…そう願っているんだろう?」
東山先生は、俺が聞きたくても聞けなかった核心に触れる言葉をJに投げた。
「……知ってるんだ…あんた…」
Jは、先生をじっと見つめて、そう言った。
その目は、先生を通り越して、
どこか別の場所を見ているような、そんな目だった。