第19章 冷酷な真実に…
潤と並んで部屋に入ると、
俺はいつもの後ろの席に行こうとした。
すると潤は、俺の手を離さずに
泣きそうな顔でじっと見つめた。
「潤…大丈夫だから…ずっと見てるよ」
「翔くん…」
潤の目を覗き込み、両手をしっかり握ってそう言った。
潤は不安そうだけど、しっかりと強い意思を持った瞳で、小さく頷いた。
「……ゆっくり話そうかな〜
ところで、潤くんは夕べ、なに食べた?」
「えっ?夕べ、ですか…?」
「あれっ?まさか忘れた?」
「覚えてますって!夕べは、酢豚でした…」
「酢豚!!いいね~…ただ私、あの中のパイナップルがどうも好きになれなくてね~」
「ああ、分かります!果物はそのまま食べたいですよね…」
「そう、そう!気が合うなぁ…」
………先生の巧みな話術で、潤は次第に緊張を解き、
表情も柔らかくなった。
流石だな~…東山先生…
俺が、感心していたその時。
潤をあの眠りへと導いて。
自分を曝け出してしまう…
幼い頃に戻ってしまう…あの…
リクライニングした椅子で、
穏やかな顔をしている潤に、先生は、
「今日は君と話がしたい…J…出てきてくれる?」
そう言った。
「………」
潤は目を閉じたまま何も言わない…
心臓がバクバクいう。
手のひらにじっとりと汗が滲む。
こんな風に、潤がJに変わることろ…
Jが潤と同一人物なんだという、
紛れもない真実を、今、この目で……
「J…君が語らないと、進まない…分かっているだろう?」
「……」
「J…」
「……」
「出ておいで…J…何も怖がらなくてい…」
「しつこいな~」
J!!Jなの!?
目を閉じたままの潤が、Jの声で話すのを、
俺は、信じられない気持ち半分で身を乗り出した。
「何度も呼ばなくたって、聞こえてるよ」
「J…初めまして。東山紀之です」
Jは、ゆっくりと目を開けて、先生を見つめた。