第18章 amends ～償い～

潤の生い立ちは、俺が思う以上に壮絶で。

とは言っても、生活や身体面に関しては、きっと幸せだったんじゃないかと思う。

一緒に暮らしていなくても、ちゃんとお父さんに認められ、
本当の母親に望まれて誕生し、愛されて育った。

そして、亡くなってからも、智くんの家に引き取られて、見た目は絵に描いたような幸せな一家だった。

一番近くにいた俺が、その闇の存在に気付かなかった位だから。


真実を、潤はきっと知らない……

美穂さんが、妊娠したと偽って強引に博さんと結婚したこと。

それはきっと罪なことだ。

だけど、それまでどんな過程があったとしても、結婚したのに、前の恋人と繋がっていた博さんも、きっと罪だ。

もちろん、親友だった美穂さんと結婚してしまったのに、関係を続けていたのり子さん…
それだって罪なことだ。


大人は、みんながみんな、
倫理に背く罪を抱えて生きてきた。

でもまあ、それは仕方のないこと。
自分たちで蒔いた種だから。

でも…………

それに翻弄され、
運命の渦に飲み込まれ、これまで生きてきた二人は…

潤と智くんは…
この先、どうなるのか？


この時はまだ、他人事みたいなこと言ってる無責任な俺だけど…

このとこが切っ掛けで、真実という名の大きなうねりに、翻弄され巻き込まれていくとは…

まだ知らないでいた。



『翔くん、今から行ってもいい？』

潤からLINEが来た。

「いいよ」

『母さんが、翔くんちに持って行けって』
「何を？」
『沖縄の親戚から届いたアイスだよ
お裾分けだって』


……おばさん…

どうしてるのかな？

気になっていたから、ちょうどいい…
さり気無く潤に様子を聞こう。

「待ってるよ」
『後30分くらいで行く』
「おっけ」

潤が来るというから、
俺は散らかった部屋を少し片付け始めた。