第18章 amends ~償い~
「のり子の葬儀が終わった日、
私の方から、潤を引き取って育てようって、
そう言ったの……」
自分を苦しめ続けた人の子どもなのに?
智くんのおばさんの言葉は、
一瞬、俺には理解できなかった
だって、何年も苦しんできたはずの…
その原因だった人の、結果…の潤…
それを自分の子として育てるなんて…
「美穂さんは、優しいんですね」
東山先生も、そう言った。
「だって……私…のり子は私の友達だったんだから…
こんなことにならなかったら、きっと…
きっと今でも、一番の友だちだった…
そして、私がのり子だったら……
幼い潤を置いて行くことが、どんなにか心残りだったか?側で成長を見守れないことが、どんなに辛い事か…
それが分かるから…
私が代わりに…潤を見守ろうと…
そう思ったのよ…
そう、思った…のに…
なのに、潤は……」
潤??
潤のせいなの?
潤は、あの家で、いい子だった、はず…
「潤くんは、美穂さんに反抗的だったの?」
東山先生の質問に、美穂さんは何度も首を横に振った。
「潤は、いい子だった…
私は智の方を、あからさまに可愛がるようなことをしても、潤は笑ってた…
こんな心の狭い母親なのに、潤はいつも…
いつも笑っていた…
それが…それが辛かった…
そんな潤を見ているのが…自分はなんてひどい人間なんだって、そう思うことが辛かった…
引き取っておいて、こんなことするんなら、
潤を連れて来なければよかったのに…って」
先生は、ゆっくりと椅子を起こした。
それに合わせて、目を閉じていたおばさんも、
ゆっくりと目を開けた。
その目は遠目にも、真っ赤に充血し潤んでいた。
「潤が…どんどんのり子に似てきて…
笑った顔なんか、そっくりで…そんな潤を見ているのが…堪らなく辛かった…」