第18章 amends ~償い~
もう、この先の話を聞くのは難しいんじゃないかって…そう思った…でも、
「潤が生まれ、もともと身体の弱かったのり子は病気がちになり、結局……」
「亡くなった……?」
「入院しているからって、博は家に帰らず、のり子のアパートで潤と暮らすようになった…
『パパは今度いつ帰ってくる?』って……
パパっこの智は、毎日私にそう聞いてきた
いつ…?って、
それがのり子が快復したときなのか?
それとも………
博にも聞けず、もうどうしたらいいのか分からなくて………そして、のり子は………」
「…会いに、行かなかったの?のり子さんには」
東山先生の質問に、俺はそんなの行くわけないって!会いたくないに決まってるって!
そう思った。だけど……
「……会いに行った…もう許してって…
博を返してって…そう言うつもりだった。
なのに……」
おはさんは泣くのを我慢するかのように、
唇を噛み締めた。
「でも、病室にいったら、のり子は私を見るなり、『美穂、ごめんなさい』って。
何度も何度も、泣きながら……
泣きたいのは、私の方だって………言えなかった」
どうしても博さんのことが忘れられなくて、
美穂を苦しめるって分かっていたのに、
どんなに謝っても許してもらえない……
ごめんなさいと繰り返すのり子さんに、
美穂さんは、何も言えなかった。
ただ、潤が待ってるから
早くよくなって戻ってやって…と…
そう言って病室を後にした。
のり子さんが息を引き取ったのは、
その3日後だった。
長い長い独白だった。
見ている俺も辛くて息が苦しくなるほどで。
のり子さんも、美穂さんも、
本当はお互いを強く思い合っていたんじゃないのか?そんな気がした。
智くんも、潤も、
生まれたときから、そんな運命を背負っていたなんて……
今、このタイミングで知った俺は…
どうすればいいんだろう?