第18章 amends ~償い~
その二日後、
俺は潤のお袋さんと二人で『ほほえみクリニック』を訪ねた。
話をしたとき、最初は拒絶した。
『絶対に行きたくない』と……
でも、潤の話をしたときのおばさんは、唇を震わせて、
脚の上でぎゅっと握った両手を硬く握りしめていて…
『少し考えさせてね』
そう言った翌日、『やっぱり翔くんと行くわ』そう言ってくれた。
だけど、潤とは…潤には聞かれたくないと…
「翔くん…大丈夫なの?この病院…」
待合室でおばさんが俺に耳打ちした。
今日は初めて受付の女の人もいたし、
いつもより全然普通の病院に近いのに…
「それが、外観とかはちょっと不安だけど、
先生は凄い先生です!きっと、すぐにおばさんもそう思うんじゃないかな~」
「そう~?」
半信半疑のおばさんは、不安そうな顔で部屋の中を見廻していた。
前の患者さんが出て行って暫くすると…
…他の患者さんがいて良かった~…って、失礼か…
中に入った俺たちは、初めて来たときと同じように出迎えてくれた先生と、
コーヒーを飲みながら、どうでもいい世間話をした。
先生のスマートな雰囲気に、徐々におばさんも心を開いていき、いよいよ診察が始まった。
潤が座ったリグライニングソファーにおばさんを座らせると、俺は部屋の隅に座り、見守った。
俺が同席することを、始めは逡巡していたおばさんは、決心したみたいに、
「翔くんには、見ててもらうわね」
そう言って微笑んだ。
なんだかそれは、俺が見るおばさんの、初めて見るような笑顔だった。
先生は優しく話し始める。
「美穂さん…子育ては、どうでしたか?」
「どうって…」
「楽しかった、とか、大変だったとか…」
「…どっちもかしらね…大変なこともたくさんあったけど…楽しかったのかな~…」
「智くんは、どんなお子さんですか?」
「智は、おっとりしていて、とっても優しい子で…怒ったところなんか、見たこともありません…
それが、ちょっと物足りないくらいで…」
「では、潤くんは?どんなお子さんでしたか?」
「潤は……」
おばさんは、少し困ったように目を伏せた。