第17章 その葛藤の先に
「先生、なんだって?」
待合室に出て行くと、潤が不安そうな顔で俺を見た。
「ああ、受付で次の予約していって、ってさ。
受付っていっても、東山先生しかいないのにね~」
俺が笑うと、潤も少し笑顔になった。
緊張したんだろう…
今まで目を反れせていた自分と、自分の過去と対峙することは、潤にとって相当の覚悟がいることだろう。
それは分かっているつもりだし、
俺が、その不安を半分引き受けなきゃ…って、そう思う。
潤の痛みも、悲しみも、苦しみも、
全部…俺が…
受付で、先生に次の予約をして病院を出ると、
潤がそっと俺の手を握って来た。
俺は、迷わずにその手をぎゅっと握り返した。
「潤…今日俺ん家来いよ」
「…いいの~?」
「うん…そのつもりだったんだ…親父たち遅くなるって言ってたから…」
その言葉に、潤は嬉しそうに笑顔で頷いた。
あの日から…
潤とホテルで話した日から、二人になるのは初めてだった。
いろいろ考えたけど、
やっぱり俺は潤が好きだから…
潤の支えになりたいって、強く思うから…
「一回じゃ、許さないよ♡」
繋いだ手を引き寄せて、耳元でそう言ってやると、
潤はパッと頬を染めて、
「翔くんのエッチ///」
そう言った。
……あ、もう、潤が可愛いせいで、
こんなとこでちょっと反応しちゃったじゃん!
そう言えば、ちょっとご無沙汰だ…俺…
雅紀とのあの夜から…
頭の中ぐるぐるして、考えなきゃいけない事が多くて、
すっかり忘れてたよ~///
忘れてんのもどうかと思うけどね…
ホントに、
今夜は潤のこと寝かさないかも♡
「よ~し!体力付けなきゃ!!
肉でも食ってくか?」
「もう~、翔くん、露骨~」
潤の笑顔を見ながら、俺も自然と笑顔になって…
外で滅多にしないのに、
手を繋いだまま、さっき来た階段を仲良く歩いた。
どうか……
潤の笑顔が、ずっとずっと俺の側で咲いていますように…