第17章 その葛藤の先に
潤の肩を抱いて、
部屋を出ていこうとすると、
「翔くん、ちょっといい?」
先生に呼び止められて、俺だけ診察室に残った。
「先生、潤は…?」
「気付いた?」
「はい、子ども頃の潤でした」
「軽い催眠療法で直ぐに退行するってことは、やっぱり原因は幼少期で間違いないね…」
「……そう、ですか……」
子どもの頃の受けた疎外感が、潤の中にJを……
「まあ、次はJくんにも話を聞きたいと思うから……」
「Jに?そんなことが、出来るんですか?」
食い気味に言う俺に、先生は、
「まあ。一応医者だからね…」
と笑った。
「あ、そういう意味じゃなくて///」
「ははは、大丈夫だよ~冗談だから!」
「あ、はあ…」
もう~、東山先生って、お茶目なのかなんなのか、
よく分かんないよ…
「ただ…」
……んっ??ただ…?
「もしかしたらだけど…翔くんが思ってるのとは、違う結果が出てくるのかもしれないけど…」
「違う結果…?それって、どういう…」
「いや、まあ、これはまだ分からないから。
それと…できれば、潤くんのお母さんにも、
一度、話を聞きたんだよね…」
「えっ?おばさんに?」
「潤くんには内緒で、話すことできるかな~?」
潤に内緒で…おばさんと…?
「…やってみます…」
「翔くんには負担だよね~?」
「いえ、潤のためですから…俺が出来ることは何でもしたいって思ってます」
先生は俺の肩を強めに叩いて、俺を見つめて大きく頷いた。
目力が、凄いんだよね…いつも…
「ま、とにかく、受付で次の予約をして行ってね…」
「受付って…先生しかいないじゃないですか~」
「おっと、そうだった!!」
……東山先生ってば…
掴めないところはあるけど、おおらかな先生に、
助けられてるのかもしれないな…
そう思うと、本当に東山先生に出会えてよかった…
そう心から思った。