第17章 その葛藤の先に
【翔】
「改めまして、潤くん、私は東山紀之と言います。
ここで君が話したことは、どこかに漏れるこは絶対にないので、安心して話していいからね?」
「…はい…」
「ははは、そう言われても緊張するよね~」
「あ、いえ…」
先生は、潤の表情を見ながら、徐々にその心に近付いていく…ゆっくりと…
俺は、ふたりから離れた椅子に座り、
成り行きを見守る…
俺の位置からは、潤の横顔しか見えない。
ただ、潤の言葉の微かな震えから、彼がいつになく緊張しているのが分かった。
「少し、椅子をリクライニングさせるよ?」
そう言いながら、東山先生は、
潤の腰かけた椅子の背もたれを少し倒した。
あの椅子…電動なんだ…
「潤くん…君は、今暮らしているお母さんの本当の子どもじゃない…そうだね?」
「はい…」
「それを知ったとき、どう思った?」
「どう、って…」
「忘れたならそれでいいよ?言いたくないなら言わなくていい…」
「……ショックだったけど、どこかで『やっぱりな』って、そう思いました」
「やっぱりな?っていうのは、そうかもしれないって感じてたってこと?」
先生は、ゆっくりと言葉を探しながら潤に語り掛ける…それはとても優しくて柔らかい…
「母さんに…何だかわからない違和感っていうか…俺より智が好きなんだな~、っていう…そう言う感じがしてて…
聞いたときは、だからだったのか…
って…そう思いました…」
潤……お前、子どもの時から、そんな風に///
俺は、可愛くて小さかった潤のことを思い出して、胸が苦しくなった…
…何にも知らないで…俺…
まだ幼い潤が、そんなことを感じで淋しい思いをしてたんだと思うと…
側にいた俺は、何やってたんだ///って、
歯痒い気持ちでいっぱいになった。
今更なんだけど……