第17章 その葛藤の先に
「可愛かったね~?」
「さっきの人が?」
「はあ~?大吉だよ!大吉」
「ふう~ん……」
「何だよ~?潤、やきもちか~?」
「ち、ちげ~し///」
図星で悔しいのと恥ずかしいのとで、
俺は翔くんを置いてずんずん先に歩き出した。
「はははっ…潤、こっちこっち~」
翔くんは、少し緊張する俺を気遣って、
朝から、さほど面白くもないジョークを飛ばして、俺の気持ちを解してくれていた。
その優しさが嬉しくて…ありがたかった…
あの時、翔くんを責めたけど、
よく考えたら、俺だって…
まあ、記憶にはないとはいえ、
Jのとき、いろんなやつと、そういうこと、してた訳で…
やってることだけを見たら、
翔くんだけを責めるなんてできない…
そう思ったんだ。
たとえ、どんなに翔くんに浮気…
…まあ、浮気と言っていいのか分かんないけど…
されたとしても…俺にはやっぱり翔くんしかいないから。
許すも許さないもないってこと。
「ここだよ」
「ここ…??ここ、やってるの~?」
「ふふふっ、潤って失礼~」
「いや、だって…」
「こんにちは~、先生、櫻井です…」
ドアを開けて、翔くんは躊躇うことなく中へとずんずん入っていき…その後に、俺も従う。
「おお、待っていたよ~!
…君が、潤くん、かな?」
先生は、翔くんと硬い握手をしながら俺を見た。
「初めまして…あの…」
「こりゃ、驚いたな~、翔くんもイケメンだと思ったけど、潤くんもまた…」
「でしょ?」
親し気な二人が、今回で2回目だっていうから、
それにも少し驚いた。
ずっと昔から知り合いみたいな雰囲気だから…
「先生~、今日も一人なんですかぁ~?」
「そうなんだよ~、松岡さん、
今度は実家のお義母さんが具合が悪いって、
2週間休みなんだ~
あ、松岡さんって、看護師さんね?」
「はいはい、分かってますって!」
ふたりは笑い合っていた。