第17章 その葛藤の先に
ダカレタ……??
どういう意味??それって…
呆然としたまま言葉が出ない俺に、
翔くんは凛とした眼差しを俺に向けて、
「顔形は同じでも性格は全く違ってた…
Jと潤が同じなんだって、そう確信したくて…
Jに抱かれた…
雅紀とは…最初は無理やりだったけど…
途中からは自分の意思で、抱かれた…」
翔くんが淡々と話す他の人との情事…
俺はまたあの感情に支配される。
腹の奥から、
どす黒い何かが沸き起こるような…
「…翔くん…自分が、何言ってるか、分かってんの?」
「分かってるよ…俺は、また、お前を…」
「言うな!!」
「…潤…」
「あの日…あの夜……翔くんが智と裸で抱き合ってたのを見たとき……俺がどんな…どんな気持ちだったか…分かる?……」
「潤…」
「俺は……俺にとっては、翔くんだけが、ずっと、ずっと前から…翔くん…だけが…」
「潤、落ち着いて!」
「子どもの、頃から…俺は、いつも…
俺の…ことなんか…誰も愛してくれないから…でも、翔くんは…翔くんだけは…違うって…そう思って…」
「潤!!」
いつの間にか、涙がぽろぽろ溢れ落ちていて、胸が苦しくて、肩で息をしてた。
そんな俺を、翔くんは強く抱き締めてくれた。
その逞しい腕を、
温かい胸を、
俺は突き放すことができなくて……
「潤…ごめん…潤………泣くな…」
大きな手が……俺の大好きな翔くんの手が、
ゆっくりと、でも力強く擦ってくれる。
その優しさに、また涙が溢れた。
結局俺は、翔くんが何度俺を裏切っても、
この腕の中を離れるなんて、
出来やしないんだ………
俺には、翔くんだけだから……
「………潤、一緒に病院に行こう…
いい先生がいるんだ……話を聞いて貰うだけでも、きっと楽になる……」
「………翔くん、ついて、きてくれる?」
「当たり前じゃん!
お前がやだって言っても、
行くに決まってる!」
「……俺の、保護者かよ……」