第17章 その葛藤の先に
…………いつもの翔くんだった。
俺たちは、肩を組んだままホテルに入った。
男同士でって思うけど、
この前来たときなんか、入り口でばったり、
俺たちよりかなり上かな?って思う、男同士のカップルと鉢合わせした。
少し気まずい反面、なんだか嬉しかったのは、
『普通じゃない』俺たちの関係を、
ちょっと肯定してもらえたような…
そんな気がしたからなのかもしれない。
俺たちが入った部屋は、翔くんが『燃える』
そう言って気に入っていた部屋じゃなくて、
冷蔵庫に、ローションや大人のおもちゃが置いてあったり、枕元のかごに避妊具がなきゃ、こんなホテルだって分からないくらいに…
一件普通のホテルのようなシンプルな部屋だった。
あの部屋も空いていたのに…
翔くんが選ばなかった理由って……まさか…?
ついつい思考が負の方へ傾きがちな気持ちを奮い立たせて、部屋のドアが閉まるなり、振り返って翔くんに飛びついた。
「ははは、せっかちだな~、潤…」
そう笑って翔くんは俺の背中を撫でてくれた。
その手のひらの温かさに、なんでかな?
不意に泣きそうになる…
「潤、顔見せて~?」
「イヤだ…」
「何でだよ?」
顔を覗き込まれそうになって、急いで彼から離れて背中を向けた。
「潤…?」
「なんか小腹空かない~?ルームサービス取ろうよ!何がいいかな~?ピザとか??それとも~」
「潤…泣いてるの?」
「……」
「潤…」
翔くんの手が、後ろから俺の肩に置かれた。
そのまま振り向かされるのかと思ったら、
「俺にさ、なんか隠してること、あるんじゃない?」
そう言われた。
隠してること……
翔くんが、俺に、じゃなくて、
俺が、翔くんに…?
俺が……
カクシテ、イルコト………
それって…
翔くん、何か気付いてるの?