第17章 その葛藤の先に
潤と智の関係…
ふたりと俺との間であったこと…
包み隠さず全て話した。
先生は、頷きながら、時々メモを取り、
俺の話を真剣に聞いてくれた。
「だから、俺のせいなんです…潤が…
潤があんなふうになったのは、きっと」
項垂れる俺に、先生は、
「翔くん、確かに、君とお兄さんとのことは潤くんにとってはショックな出来事だっただろう…
だけどそれは、切欠だったに過ぎない…
私はそう思っている。
Jくんと話してみないと分からないけど…」
「でも…Jは病院には行かないって…頑ならしくて」
「潤くんならどうかな?」
「えっ??」
「潤くんなら、君の言う事なら聞くんじゃないかな?君が病院に行こうといえばついてくるよ…おそらく」
潤に……
…潤なら素直に俺と一緒に来る…
それはきっとそうだろうけど…
「先生……だけど、潤は病気のことは…」
「知らない?」
「……はい…」
「果たしてそうかな?」
「……先生…?」
潤は何も覚えていない…そう言ってたし…
いずみさんも…Jも…
「仮にね、朝起きて自分の部屋の、自分のベッドで寝ていたとしても…
深夜に君と関係を持っていたわけでしょ?
その他にももっといろんな経験を重ねていた」
「……はい…」
先生は、
頭は覚えていなくても、身体に感じる違和感には気付いていたはずだと…
それを、誰にも言わなかったのは、怖かったから…
自分が何者なのか?
記憶がない間に、何をしているのか?
何か、とんでもないことをしているんじゃないか?
そんな、言い知れぬ不安を抱えていたんじゃないか…
先生は続けた。
「きっと、潤くんも苦しんでいるはずだよ…
助けてあげられるのは、翔くん、君しかいないよ」
俺しか、いない……
潤を…
Jを救うことが出来るのは…
「先生、今度、潤を連れてきます…」
「分かった…任せなさい!!
こう見えても、案外頼りになるんだ!」
「そう見えます!!」
東山先生は、大声で笑った。