第17章 その葛藤の先に
「ハイ、どうぞ。ごめんね~、ミルク切らしちゃってて、砂糖にしたけど…良かったかな~?」
「はい、大丈夫です」
イケメン医師は、自分もムーミンのマグカップを持って、俺の目の前の椅子に腰を下ろした。
「改めまして。東山紀之です。」
「えっ!!あなたが…?看護師さんなのかと…」
「ハハハッ、看護師に今日、急に休まれちゃってね~子どもが熱なんだって~
ごめんね~、俺だけで…」
「あ、いえ…すみません…」
この人が……
そう思って改めてみると、おじさんなんてとんでもない!まあまあの年だろうけど、シュッとした立ち居振る舞いは無駄がなく、すっきりした綺麗な顔立ちで…
「白衣来てないので、分かりませんでした。失礼しました」
「ああ、白衣は患者さんに恐怖を与えちゃうからね~。もうずいぶん長いこと着てないな~」
「そうなんですね…」
ムーミンを口に持って行き、コーヒーを一口飲んでから、先生は俺をじっと見てから言った。
「いずみが言ってたけど、ホントに…翔くん、イケメンだね~しかも、嫌味がない!」
「いえ、そんなことは…東山先生の方がずっとイケメンです!!」
「ハハハハッ…嬉しいね~…」
「さてと。本題に移ろうか?」
急に真顔になった先生は優しく笑った。
先生はいずみさんから、Jの様子は詳しく聞いているらしく、話は主に潤の家庭のことと、
俺と潤との関係だった。
「俺は小さい頃からずっと、潤と一緒にいました。
まだ子どもの頃に、潤が俺を好きだっていうの聞いて、俺もいつしか……」
「恋人だったの?」
「はい」
「上手くいってた?」
「はい…でも俺が潤を裏切ってしまって…」
口籠る俺に、先生は、
「言いにくいことかもしれないけど、大丈夫!
凄い修羅場の話を何度も聞いて来てるからね~
驚かないと思うよ」
そう言って、片目を瞑って見せた。