第17章 その葛藤の先に
「翔くんが責任を感じることじゃないわ」
「でも…俺…」
涙が浮かんできた。
「翔くんが何をしたかは知らない…Jはそれは言えないって…何でも素直に話してくれたけど、
翔くんのことは悪く言わなかった…」
潤…//////
「なぜだか分かる?翔くんが、Jにとっても、潤くんにとっても、何より大切な存在だったから…
どんな時も、翔くんが心の支えだったのよ」
「うううっ…」
堪えていた涙が、後から後から溢れ出て頬を流れ落ちた。
「…俺は…俺は潤を…裏切った…」
後悔が……波のようにうねりながら、
俺を飲み込む………
俺の弱さが、潤を深く傷つけていた。
分かっていたつもりでいたけど…
それ以上だった…
俯いて、顔を覆って泣く俺に、いずみさんは、
「翔くん、私はJに元に戻って欲しいって思ってるの…1人の身体が、二つの人格を持つ前に…」
「……」
「それは、翔くんにしかできないって思ってる…Jも潤くんも、一番心を寄せているのは、あなただから…」
俺に…?
何が出来る?
どうすれば…Jと潤を…
いずみさんは1枚の名刺を出して、俺の前に押してよこした。
なんでも彼女の友人の心療内科医で、相談に乗ってくれるはずだと…
「私から、連絡しておくから、一回相談してみるといいわ…親身になってくれると思うから」
「……はい…ありがとう、ございます…」
「さあ!食べよう~よ♪こんな可愛い子とデートなんて、おばさんには貴重な時間なんだから~」
そう笑ったいずみさんの優しさに触れ、俺はまた涙が零れた。
傷付いたJを拾ってくれたのがこの人で、
本当に良かった。
心からそう思った。
名刺には、
『ほほえみメンタルヘルスクリニック
医師 東山 紀之』
と書いてあった。