第17章 その葛藤の先に
いずみさんの車はSUV車で、社内ではクラッシックがかかっていて、とても綺麗だった。
「新車なの♡」
「えっ?」
「車…先週納車だったのよ~
助手席に乗せるのは、翔くんが初めて♪」
「そんな~///すみません、俺で」
なんだか申し訳ない気がしてあたふたする俺を、いずみさんは大きな声で笑った。
「翔くんって可愛いね…Jが夢中なのも分かるわ~♪
私としては、初めてのお客さんが、翔くんみたいなイケメンの若い子で、大喜びしてんのよ!」
「若い子……」
「ははは…大丈夫よ!捕って食いやしないから~」
「そ、そんな、俺は…」
この間も思ったけど、いずみさんは明るくて屈託がなくて…年齢は分からないけど、バイタリティー溢れるキャリアウーマンって感じだ。
しばらく走ってから、彼女は車を道路脇のパーキングに停めた。
「いきましょ」
そこから歩いてすぐの場所にある店の暖簾をくぐるいずみさんの後をついて行った。
とても高級そうな店だ。
いずみさんは常連ぽい感じで、
通された個室に入り椅子に座った。
「焼肉でよかった~?若者はやっぱ焼肉でしょ?」
「はい、大好きです!」
「よかった~、たくさん食べてね!!」
「いらっしゃいませ、先生、しばらくぶりですね
今日はまた、お若い殿方と(^^)」
「いいでしょ~?おすすめの、適当に持って来てよ!」
「はい…承知しました…ごゆっくり…」
彼女は俺を見てにっこりすると、個室を出て行った。
「ここ、私の顧客なの」
「あ~、そうなんですね」
「凄くいい国産牛扱ってるから、美味しいわよ~」
「なんか、すみません…急に電話したのに…」
「いいのいいの!!たまには若い人と美味しいお肉も、いいよね~。デートみたいで楽しい♡」
そう言っていずみさんは、俺の顔をじっと見つめた。