第17章 その葛藤の先に
【翔】
Jが俺に話したことは、表面に見えている事実のみ…
その裏に隠れたJの気持ちとか、
潤のこと…
誰かに話して相談に乗って欲しいけど、
智くんはJの存在を知らないだろうし…
もう、雅紀やニノももはや違う。
俺はさっきから1枚の名刺をずっと見つめていた。
この人なら……
全てを知ってるのは、この人しかいない。
俺は、意を決して俺は彼女に電話を掛けた。
数回の呼び出し音の後、彼女は直ぐに出た。
『もしもし?』
「あ、先日はお世話になりました…あの…」
『翔くん?電話してくるって思ってたわ~
今どこ?』
「え?あ…家ですけど…」
『じゃ、これから出て来れる~?』
「ハイ!勿論です…いずみさんは、いいんですか~?」
『大丈夫よ、今日はもう終わるから…』
俺は彼女に指定された場所に行くため、
急いで着替えて家を出た。
今日はバイトも入ってないし、
潤とも約束していない…
電話したその日に会えるなんて思ってなかったから、最初戸惑ったけど……
Jのことをもっと知りたい…
Jの本当の気持ち…
それを知らなければ、この先の道も見えてはこない…
そんな気がする。
Jと潤…
このままでいい訳ない…
どうなればいいかなんて、
どんな形がベストかなんて、
そんなの分からないけど……
取りあえず、俺は知りたい。
いずみさんの前でJが見せた素顔を、俺も見たい。
「翔く~ん、こっち!」
見れば、道路の反対側にグレーの車が止まっていた。
車の窓を開けて彼女は俺に向かって大きく手を振っている。
急いで駆け寄ると、
「乗って!」
いずみさんは助手席の窓を開けてそう言った。
俺は迷わず、彼女の運転する高級車の助手席に乗り込んだ。
新車のいい匂いがした。
「今日は?何時までに帰ればいいの?」
「あ…別に、何時でも…」
「うふふ…不良少年ね~♪
じゃ、美味しいものでも食べに行きましょ!」
そう笑って彼女は車を発進させた。