第16章 turning point~転機~
「翔……俺にとって、潤の時も、今も…
翔の存在は支えだった……」
「……J…」
「ひとつの身体の中にふたりの人格がいる…
気持ち悪いよな?」
俺は首を何度も左右に振った。
「でもそれが、翔が知りたがってたJと潤の秘密だよ…
そんな俺のこと、病気で気持ち悪いっていうなら、それでも仕方ない……俺から、離れていいよ…」
………J……潤……
「俺は…ずっと、側に…」
「いいから。……今答えなくてもいい。いや、答えないで!
しっかり考えて……翔の将来のこと考えたら、いい機会なのかもしれない…
俺なんかといても、翔の未来に光はないよ」
……………
J…いや、潤…なのか?
そんなこと、普通の顔して言うなよ…
俺は…
俺は、いつだって、ずっと、潤と……
「俺は近いうちに、あの家を出るよ…」
「…J…」
「あそこに居たんじゃ、俺の病気は治らない…
もともと、あそこは俺のいるべき場所じゃなかった」
「J!!そんなこと…あの家に…智くんの弟が潤だったから、俺は知り合えた!」
「……まあ、潤は何も知らないからね…
今でもキモイくらいに純粋に、翔のことだけを、好きみたいだしね」
J………
Jは?Jは俺のこと…何とも思ってないの?
俺のこと、好きでいてくれたんじゃないの?
そう聞こうとしたけど、完全に否定されてしまうのが怖くて、俺は口を噤んでしまった。
「まあ、そういう事だから…始発を待ってここを出よう…いずみさんにも悪いしね~」
「J…いずみさんって…あの…」
「彼女は俺の恩人だよ…」
恩人?
それってどういう……?
聞きたいことはまだ山ほどあるけど、
リビングのソファーで寝るというJは
俺にベッドで寝る様に言って、部屋を出て行ってしまった。
部屋にひとり残された俺は、何だか無性に悲しくて…切なくて…
Jの匂いの残るベッドで、朝まで眠れなかった。