第16章 turning point~転機~
Jは当たり前の顔してリビングらしき部屋のドアを開け、中へと入っていく。
玄関に突っ立てる訳にもいかないから、
俺もその後から中に入る。
「ただいま…」
「お帰り~……」
マッサージチェアーに深々と座り、
目を閉じたままJを迎えたのは、初めて見る大人の女性だった。
見た感じ、俺たちよりは大分上の……
「あのさ、お客連れてきた。部屋貸して」
「えっ??」
女性は、慌てて身体を起こして俺を見た。
「J…あなた…」
「ごめん…何もしないから…ただ、ゆっくり話す場所が欲しくて…それに、いずみさんの事も、翔に…」
その女性はいずみさんというらしく…
「ふ~ん……そう…」
俺を値踏みするように上から下まで見てから、
「初めてね、Jがここへ誰かを連れてくるのは…」
そう笑顔になった。
「あの…俺…」
「いずみさん、こっちは翔。俺の…」
「翔くん??あなたがあの翔くんなの~?」
いずみさんは嬉しそうに立ち上がって俺の前まで来た。
「ふ~ん…あなたが…そうなんだ…」
値踏みするように俺を見る彼女は、露出度の高いタンクトップ姿で、ちょっとドギマギしてしまう。
「いずみさん、その恰好…」
「あ、ごめんなさい~、Jがお客さん連れてくるなんて思ってなかったから~」
いずみさんは時に慌てる風でもなく、大きな皮張りのソファーに掛けられたカーディガンを羽織った。
「翔、彼女はいずみさん…こう見えて弁護士さん」
「こう見えてって何よ~!」
「だって、どう見たってクラブのママさんにしか…」
「J!人は見た目で判断しちゃダメなの!」
じゃれる様に言い合う二人は、何だか姉弟のようにも見えて…
いったいどういう関係なんだろう?
潤にこんな知り合いがいたなんて…
初めて知った。
そんな俺を見たJが、
「潤は知らないよ?彼女のことは…」
そう言った。