第16章 turning point~転機~
Jは俺たち仲間の方は見向きもせず、
翔の手を引いてVIPへと行ってしまい、
そして、そんな二人を見ても、
茶化すようなやつは誰もいなかった。
Jと翔は、閉店間際までVIPから出て来なかった。
「なあ、帰ろうぜ」
出てくるのを雅紀に見せたくなくて、
まあ、俺だって嫌なんだけど……
先に席を立ってしまおうとしたけど、
雅紀はソファーの背凭れに身体を沈めてしまった。
なんだよ…?
まだ見届けたいのかよ?
ふたりが『いたしてきました』
っていう甘い空気を纏って戻ってくるのを。
よせばいいのに………
そう言ってやろうかと思ったけど、
まあ仕方ないか…
そうやってさ、
何度も何度も傷ついて、
行くところまでいかないと、
諦めるなんて出来ないんだろうから…
付き合うさ……
どこまでもね。
VIPから出てきたふたりは、
俺たちには目もくれず、
店を出ていった。
いつもは仲間のところに戻ってくる。
なのに今日は、俺たちの横を通ったのに、なにも言わないどころか、見ることさえしないで。
黙って歩くJの後ろを、翔は少し離れてついていった。
どうした?
ふたりに何があった?
二人を見送る俺たちは、言葉もなく、
帰っていくふたりの背中を見ていた。
「…あの二人…何があったんだろう?」
「………」
「なあ、雅紀」
「……うん、分かんない…でも…」
頷き合った俺たちは、
彼らの後を追うように席を立った。
別に二人をつけるつもりもなかったが、あんな雰囲気の二人を見たのは初めてだったから…
急いで店の外に出てJと翔を探したら、
少し先からタクシーに乗り込むところだった。
それを追うこともできず、
見送った俺たち………
雅紀は呆然とタクシーが見えなくなるまで、その姿を見送っていた。
雅紀……………
俺って、お前の何??
そう聞いてみたくなった………