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Baby blue【気象系BL】

第16章 turning point~転機~


【ニノ】


翔が来た。
もう来ないんじゃないかと、
そう思い始めていた矢先だ。

それまで、雅紀や俺と酒を飲んで
談笑していたJが弾かれたように立ち上がった。

ボックスの仲間が
一斉に入り口の方を見た。

翔だ。

少し困ったような上目遣いで、
フロアの中を、眩しそうに見ていた。


……!!


直ぐ様立ち上がったJが、
周りを押し退けて翔に駆け寄り、
そしてそのまま抱き締めた。

「……J」

隣に座っている雅紀が、呆然と呟いた。


それはまるで、一枚の絵を観ているような……
磁石が引き合うような……

そんな光景だった。

噛み締めた唇が僅かに震えている。
そんな雅紀の手に、そっと自分のを重ねると、雅紀は、その手を見つめてから、俺を見た。

雅紀はあの後、泣きながら俺に言ったんだ。

『翔には絶対に敵わない』と…

雅紀に酷いことされたのに、
雅紀が話した過去に同情し、
自分が少しでも癒しになれるなら…

そう言って、自ら身体を開いて
雅紀を受け入れた翔……

誰もが出来ることじゃない……

きっとJも、翔のそんな一面に触れて、
彼に心を移していったんだろう。


俺と雅紀の完敗だ。

純粋な人間ほど強いやつはいない。
汚れのない人間は、
どんなことしたって、綺麗なまま。

雅紀はそう言って笑った。

その顔が、雅紀が初めて見せた素顔な気がした。

いつも明るいけど、どっかで無理してて
精一杯頑張ってるみたいな、
そんなところがあって……

でも、何でだろう?
聞いちゃいけないんじゃないか、って…

何となくだけどそんな気がして、
俺から雅紀の家のことを
聞いたことはなかった。


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