第16章 turning point~転機~
【翔】
あの雅紀とのことがあってから、
何となくAsteriskから遠退いていた。
あの晩のこと…
雅紀と自分のしたことを後悔してる訳じゃない。
ただ…どんな顔してJに会ったらいいのか、
それが分からないというか…
逆にJは、その事を知って、快く思わない…
そうなのか?
少しは面白くないと思ってくれるのか?
何とも思わないんじゃないか?
それさえも分からなく…
改めて、自分たちの関係って、いったいどんなものなのだろうと、分からなくなった。
俺は、Jが潤だっていう真実を突き止めたくてJに抱かれた。
そこになんの感情もなかったのか?
答えは、NOだ。
俺はJが……
Jと潤が同じ人なのか?
それを暴くことが果たして善なのか、悪なのか
それは分からない…
分からないから、会うのが怖かったのかもしれない。
脚が遠退いてから2週間目の土曜日。
Jは来ているだろうか?
行く直前、俺は潤の携帯に電話をした。
すると、
『お客様のおかけになった……』
予想通りの無機質なメッセージが流れた。
潤はバイトに行っている。
そういう事になってはいるが、本当は、このドアの向こうにいるんじゃないのか?
俺の知らない顔をして、知らない人を演じているんじゃないのか?
………知りたい…
けど…知るのは怖い。
それまでの俺とJ,俺と潤…
その関係が、変わってしまう…壊れてしまう…
そうなったとき、俺はどうすればいい!?
でももう、後戻りはできない。
疑惑を抱えたままで、今まで通りになんかいられない…
答えを知りたい。
俺はもう、パンドラの箱を空けてしまったんだから。
俺は大きく息を吸い込んで、
Asteriskのドアを開けた。