第15章 消えぬ想い
【翔】
始めはそうじゃなかった…
馬鹿な自分と、
与えられた屈辱の時間に、
涙が溢れた。
だけど……
雅紀はずっと苦しんで生きて来た。
色んな苦悩を背負って、それでも今まで前を向いて生きてきて…そして、笑ってた。
俺の知ってる雅紀は、周りの人に気を使い、
困ってる人がいれば声を掛け、
塾の子どもたちのことも、
自分の事のように親身になって教え、
相談にも乗ってあげていた。
だから、全然分からなかった。
っていうか、知ろうともしなかった。
clubの仲間が、『あいつは苦労してるから』
そう言ってたけど、ピンと来なくて…
あの、太陽みたいな笑顔の雅紀と、
雅紀が語ったような壮絶な人生とは、
聞いた今でも、結びつかなくて……
Jと雅紀が付き合ってたなんて…
仲良しだとは思ってたけど。
そういう関係だったとは、知らなかった。
Jが、雅紀の心の拠り所だったということも…
Jは何も言わなかった。
そして、何もしなかった。
手を出す…なんて言葉は使いたくないけど、
実際に、VIPで二人っきりの時、
Jは紳士だった。
時にはソファーでくっ着いて座り、
Jが俺の肩を抱き寄せた形で、そのまま話すこともあったけど。
Jはそれ以上は、何もしてこなかった。
何度も何度も、二人っきりの時間を過ごすうちに、
俺は、どうしても知りたくなったんだ。
Jと潤は、同じなんじゃないかという疑問。
目の色だけじゃない…
表情も、仕草も、言葉遣いも、
何もかもが潤とは違っていたから、
そっくりの他人なのかとも思ったけど……
Jといる時に、潤と電話もLINEも
何一つとして被ったことがなかった。
それが、単なる偶然だとは、どうしても思えなかった。だから……
身体を繋げば、分かるかと思ったんだ。