第15章 消えぬ想い
【雅紀】
本当は話したくなんかなかった。
俺のお涙ちょうだいの過去なんか…
話したら最後、翔とは対等じゃいられなくなる、
それは分かっていたから。
翔の明るさと素直さに憧れていた。
友人として、翔を大切に思っていた。
話せば翔は俺に同情するだろう。
それが嫌だったから…
そんなの堪んないから……
でも、Jを翔に取られた時点で、
そんな関係はとっくに壊れてたんだ…
僻み…妬み…
端っから無理だったんだ。
俺と翔が、友達になるなんて……
生まれ育った環境が違い過ぎる…
生きている世界は真逆だ。
汚い俺は…
薄汚れた俺は…
翔の友人を名乗る資格なんかなかった…のに…
もっと早く気付いていれば、
こんなことにならなかったのに……
……翔…ごめん……
でももう、止められない……
お前が壊れるところを、見るまでは…
泣きそうになる気持ちを、
グッと堪えて、翔を突き上げた。
「…ん…っ…ん…ん…ん…」
「翔…声出せよ…Jに聞かせた声…俺にも聞かせろよ…」
「……」
目を閉じて、唇を噛んで、
敷いたタオルを掴んで、翔が堪える…
その風情に…俺の中の雄が反応する…
愛してるんじゃないのに、
憎い筈の相手なのに、
胸の奥から沸き起こる不思議な感覚。
……これが、庇護欲…なのかな?
こんな酷いことしておいて、
今、この瞬間、翔を守りたいと思う自分…
………狂ってる…
俺は……狂ってる……
「…翔…鳴いて…?我慢しないで…声…
声を聞かせて…」
汗ばむ身体を引き寄せて抱き締めれば、
肌と肌は吸い付く様に重なった…
……温っかい…
俺の尖った心の棘を
翔の熱がとかしてくれる……
そんな錯覚さえ覚える。
愛じゃない……
だけど…
翔を愛しいと思うのは、俺の幻想なのか?