第15章 消えぬ想い
『…翔くん、聞いてるの?』
「あ、聞いてるよ」
『今、どこにいるの?』
「…友達ん家…」
『ふ〜ん…ねえ、今夜、帰ってくるでしょ?
……会いたいな…』
「あ……うん…」
このままここに泊まるわけないから、
帰るだろうけど……
だけど……
この後に………潤と…?
『ねえ、……ダメ、かな?』
「ダメ、じゃないけど…」
「お待たせ」
その時、雅紀が風呂から出てきた。
「また、電話するよ。じゃ」
急いで電話を切った俺に、
「慌てなくてもいいのに。潤?」
見ると、膝下のズボンに、
上半身は裸の雅紀が。
「…うん」
「そんなに慌てて切らなくても
よかったのに〜……言ってやった?
これから、お前じゃないヤツと
いけないことするよ〜って…」
………雅紀…
雅紀の歪んだ笑顔に、胸が押しつぶされそうになる。
「なっ、なんだよ!?だってそうだろ~?
翔のやってることは!!」
「………」
「ふん…まあ、いっか。俺が付けた痕でも見りゃあ、潤もさすがに気付くだろうしね…」
痕?雅紀…俺の身体に、
今夜の情事の痕を残す気でいるんだ…
「やめて…お願いだから、それだけはしないで」
「…別にいいじゃん…今更…」
「ダメだ!ホントにしないで…潤に、心配掛けたくないんだ…潤をこれ以上、悲しませたくない…」
「…翔……」
「お願い!!雅紀…他の事なら、何でもするから…
身体には…どうか…」
俺は、床に両手を付いて頭を深く下げた。
これを世間では、土下座っていうのかな?
まさか、生まれて初めてこんなこと、
このタイミングですることになるなんて…
「わ、分かったよ…
…じゃ、始めようぜ」
「……うん…」
「…脱げよ…」
「え……」
「自分で脱いで見せろよ…俺が見てる前でさ…」
「雅紀……」
雅紀は、壁に寄り掛かって腕を組んだ。
ゴクリッ…
俺の喉が、派手な音で鳴った。