第15章 消えぬ想い
「お邪魔しま~す」
「どうぞ」
「へえ~、雅紀の部屋ってこんななんだ~」
こんなって何だよ?
古くて狭くててびっくりしたのかよ?
「綺麗に片付いてるんだね…物も少ないし…」
片付いてる?
そうじゃないよ…必要のないものを買う余裕がないだけ…ゲームやCDなんか、買う余裕も…
「俺の部屋なんか、もので溢れててさ…
いつも片付けろって、潤に…」
「潤?」
「あ、うん…隣に住んでる…」
「友達?」
「ああ、まあ、そんなとこかな…」
俺は翔のために、冷蔵庫からつまみになりそうなものを皿に盛りテーブルに置いた。
「ありがと、雅紀」
俺たちは一緒にプルタグを引いて飲み始めた。
他愛もない話をするうちに、
「なんか、暑いね~」
そう言って翔がTシャツの上に着ていたパーカーを脱いだ。
すると、首筋に赤い痕が……
それって、その痕って…
「…翔…それ…」
「えっ?どれ…?」
「首筋に…キスマーク…」
「マジで??」
翔は慌てて両手を首に回し、赤を隠した。
………息が詰まる…
…手が、震える……
全く、あいつ…なんて言いながら、翔はまたパーカーを羽織ってしまった。
「それ…Jが?」
やっとの思いで、搾りだすように言った。
すると翔は驚いたような顔をしてから、
「どうして…それを…?
あ、でも、これは違うよ…」
「違う?違うって、J…じゃ、ないの?」
「……Jは、こんなこと、しなかった…」
「じゃあ、誰が…?」
鼓動が大きくなる…
この間、AsteriskでJに抱かれたはずの翔に
誰か別のヤツが……
キスマークを残しても、気付かないほどの、
そんな関係のヤツが…翔に、いるって?
翔は困ったように、少し赤くなって、
「これは、多分潤が…」
そう言って、パーカーの布地越しに首筋を撫でた。