第15章 消えぬ想い
「この後どうする~?」
「この後…?」
俺は翔と飯を食ったらそのまま別れるつもりでいたのに…翔は…まだ俺と居たいって?
「俺んち、って言っても親がいるし~」
「じゃ、俺ん家…来る?」
「ええ~?いいの?」
「別にいいよ…大したとこじゃないけど…」
「全然イイよ~、じゃ、酒買ってって呑み直そうよ」
「うん…」
俺たちはファミレスを出ると、メトロを乗り継いで俺のアパートに向かった。
まさか、翔を連れて行く日が来るなんて、
夢にも思わなかったけど…
翔の家がどんな家なのか知らないけど、
持ってるのもとか着てるものなんか見ると、
俺と違って、そこそこいいとこの坊ちゃんなんじゃないかな~…
苦労なんか、したことない、みたいな…
途中のコンビニで酎ハイとビールを買った。
「つまみも買う~?」
「あ~、乾き物とチーズくらいならあったかな」
「ほんとに?じゃ、飲み物は俺の差し入れね♪」
そう笑って、翔がレジを済ませた。
「雅紀、大学に入ってからひとり暮らしなの?」
「いや…高校の時から…」
「高校?そうなんだ…自由でイイね~」
自由??
そんな甘っちょろいもんじゃない…
俺だって、出来るなら親に守られて実家で暮らしたいよ…それが不可能だから一人でいるのに…
………なんだか、イライラする…
翔は何も知らないんだから、イラついても仕方ないのに…そんなの、分かってるのに…
能天気なお坊ちゃんと俺は、
住む世界が違うんだ…
ホントなら、交わることのない人生のはずだった。
……翔…
羨んでも仕方ない。
妬んでも仕方ない。
今までの人生、
そう思って諦めて生きて来た…
でも……
翔みたいな汚れていないヤツを見ると、
無性に泣かせてやりたくなる…