第3章 悪戯
駅を出て、直ぐ近くのバス停のベンチに腰を下ろして俺は携帯で暇潰しにゲームを始めた。
夜遅くになっても比較的暖かくて助かった。
暫くすると、こっちに向かって走ってくる足音が聞こえたけど、気づかない振りをした。
「翔くん!」
「お〜、お疲れ!酔っぱらいがそんな走って大丈夫なの〜?」
呑気にそう言うと、潤は、
「全然酔ってなんかないよ…だって…」
「俺が顔出したから〜?
それは悪いことしちゃったなぁ〜。潤を見つけて嬉しくって、つい声掛けちゃったんだ♪」
わざと微笑みながら、無邪気を装った。
「……ごめん…」
「何で?…どうして謝んだよ?大学の仲間~?」
「…仲間っていうか…ねえ、こんなとこで話してるより、…行こ…」
…そう上目遣いで言う潤が可愛くて…
行くってどこへ~??なんて揶揄ってやろうかとも思ったけど。
まあ、ここで降りることを了承したってことは、そういう事だし…
俺は笑顔で潤の手を握った。
「しょうくん…」
途端にパッと嬉しそうに目を見開いた潤の手を引いて、俺はいつものホテルの入り口を入っていった。
手際よく、鍵を受け取りエレベーターに乗った。
何となく気まずい沈黙が流れ、俺達は同時に階を示す数字を見ようと顔を上げた。
それがあんまり同じタイミング過ぎて、思わず吹き出した。
潤は、少し照れくさそうに俺に身体を寄せて来た。
「よし、行くぞ」
「よしって…翔くん気合入り過ぎ…」
そう言って笑う潤は、天使みたいに可愛かった。