第3章 悪戯
「翔くん!どこ行ってたの~?帰ったかと思っちゃった~!」
ゼミの仲間のところに戻ると、いつも何かと俺の世話を焼きたがる女子が、俺の手を引いて自分の横に座らせた。
「ごめ~ん、少し酔いを醒ましてたんだ…飲み過ぎちゃったかな~?」
笑いながら、さり気無く絡められて手を解いた。
こんな風に、彼女でもないのに無遠慮にベタベタしてくる女の子って…苦手なんだよね、実は…
それから、1時間ほど飲んで、解散になった。
…潤、もう帰ったかな~?
二次会にカラオケへ行こうと誘われたけど、
頭が痛いって言って断った。
近くの駅からメトロに乗ったその時、潤からLINEがきた。
『翔くん、今どこ?』
潤…合コン終わったのかな?
『今帰りだよ。祐天寺の辺かな?潤は?』
『東横線のホーム。ねえ、等々力まで行って』
等々力って…潤…
そこには、時々潤と使っているホテルがあった。
そこに行けってことは、所謂『そういうこと』の誘いな訳で…
直ぐに分かったけど、俺は敢えて、
『どうして?』と送った。
すると潤は、『翔くん、ごめんね』と返してきた。
あいつ、俺が怒ってるって思ってるんだな~
別に、怒ってなんかいないけどね。
でも…それならそれで、面白いかも…
俺の中に、ちょっとした悪戯心が芽生えた。
敢えて、既読だけ付けて暫く時間を空けてから、『等々力で降りたよ』と送った。
潤からは『直ぐに行くから』と直ぐにレスがあった。