第14章 desire〜欲望〜
キスさえない……
ただ欲望を満たすだけの…
イライラをぶつけるだけの…
心のないセックス……
そんなの、何度も…
数え切れないほどしてきた…
解されないまま突き立てられた孔が悲鳴を上げても、
そんなのお構いなしで、自分よがりの、
愛のないセックス…
そんなの別に、慣れてるし、
何ともない…
別に……
どうってこと……
……涙が、零れた。
雅紀の熱が広がるのをを中で感じて、
俺もそれを追いかける様に解放した。
雅紀が出て行くと、
立っていられなくて床にペタンと座り込むと、
雅紀の放った欲望の証が、流れ出るのが分かった。
「…んんっ……」
その感覚が背筋を伝わって、俺は総毛だった。
「……ごめん…」
俺の横に跪いて、項垂れる雅紀…
……謝んなよ、そんな…
「何でだよ~…別に謝ることなんかないじゃん…」
涙の痕を見られたくなくて、ティッシュを取りに行く振りで立ち上がったら、
太腿の内側を残骸が伝わった。
「俺が持ってくるから!!」
転がるように立ち上がった雅紀は、
棚の上からティッシュの箱を持ってきた。
「ニノ…俺…」
そう言いながら、雅紀が自分で出した欲を、
俺の脚から拭き取った。
「シャワー、して来るよ…」
わざと明るくそう言って、
俺は風呂場に逃げ込んだ。
………
……
何やってんだよ…俺たち…
熱いシャワーの音が、俺の嗚咽を消してくれた。
それでも、扉ひとつ向こうに雅紀がいると思うと、
泣いていることを知られたくなくて、
人指し指を強く噛んだ。
J……
おまえ、今、どこで、
何してるんだよ…
俺たち、こんななのにさ……
昼間、Jが、何をして、
どんな風に生活しているのかなんて、
俺と雅紀は何も知らなかった…
Jが、何者なのかも……