第14章 desire〜欲望〜
【ニノ】
『ピンポーン♪』
安っぽい音が来客を告げる。
誰だろ?
新聞の勧誘とか、NHKの受信料の取り立てだったら面倒だから、と、シカトを決め込んだ。
『ピンポーン♪ピンポーン♪ピン…』
「はーい!!」
///全く、なんてしつこい勧誘…
ドアを開けると、そこに立っていたのは…
「雅紀…何で…?」
そこには、悲壮感漂う雅紀が立っていた。
「入っていい?…つ~か、入るし…」
「あ、ちょっ///」
雅紀は玄関で、まあ玄関という程のもんじゃないけど、
靴を脱ぐと、部屋の中に上がり込んだ。
「なんだよ~?急に来るなんて…」
雅紀が急に来るのは珍しい。
いつもは『今から行っていい?』って、
必ず聞いて来てから来てたし…
「今日は?」
「塾のバイト帰り。ニノの顔見たくなっちゃって」
「なんだよ…それっ…」
雅紀の訪問は、沈んでいた俺の気持ちをほんの少しだけ、浮上させた。
このところ、Jは翔とふたりでVIPに行くことがほとんどで、
俺と雅紀を誘うのは、翔が用事で来ないといった時だけだった。
ただ暇つぶしをするように……
翔に会えない淋しさを埋める様に…
『俺たちのこと、何だと思ってるんだよ///』
そう思うし、そう言いたいけど、俺も雅紀も、
何も言わなかった。
言ってしまったら、
「じゃあ、もう終わりだな」
Jに簡単に切り捨てられてしまったら、
俺は……
俺たちは………
翔がAsteriskに来るようになって、
Jは変わった。
他のヤツらと関係を持つようなことも無くなったし、
群がっていた女の子たちとも、距離を置く様になった。
そのくせ、翔とは相変わらずの関係…
翔には、そういうことを求めないのか、
翔がいいって言わないのか…
いつになっても、翔が潤と一線を越えたっていう、
そういった空気感はゼロで……
俺と雅紀のイライラの原因はそれだった。