第13章 encounter〜出会い〜
「………」
黙り込む俺に、ニノが、
「一緒ならよかったの?」
と言った。
確かに……
一緒になら…
その場に居れば、Jが翔を抱いても、
俺は平気だったのか?
ニノを抱くのを見ているような気持ちで、
それを見ていられたんだろうか??
ニノとの関係は、別だ。
何が違うのかなんて、自分でもよく分からないし、説明も出来ないけど……
しいて言うなら、ニノは同志…
でも、翔は……
翔はそうなならない…
そんな気がしている。
今日だけ特別翔だけを連れて行ったんじゃない。
翔を見るJの目がさ…
違うんだよ…今まで見て来たJの目とは…
「どうする?今日はもう帰る?」
「えっ?」
「二人が出てくるの、待ってて出迎えるの?」
………二人が出てくるのを…?
VIPから、寄り添って顔を出すのを、
俺はここで待つのか?
たった今、Jに抱かれてきました、
みたいな翔の顔を……
俺は普通の顔して見ていられるのか?
だったら……
「でもまあ、あれだな?このまま翔とJがどうなったのか知らないまま何日も過ごすより、
ハッキリ現実を知った方がいいのかもね~?
その上でさ、俺らはどうするのか…
Jは、どうするのか??
しっかり見極めとくか~」
そうだ……
何もないかもしれないし…
奥に行ったっていっても、
何もしてないかもしれないじゃん…
それならさ、俺…
まだ平常心でいられるんじゃないか?
そうだよ!!
ここじゃ煩くて話せない。
それだけの理由でVIPに行ったのかもしれないし。
「待つよ」
「…そう…」
後で思うと、俺、もしかしたら、
泣きそうな顔してたかもしれない…
それでもニノは、何も言わず、俺に従ってくれた。
考えてみたら、
俺よりも、ニノとJの方が長いんだ。
何とも思わない訳じゃない…
不安なのは俺だけじゃない…
でも、この時の俺は、
ニノの気持ちに、心寄せることさえ出来なくて、余裕なんか、これっぽっちも残っちゃいなかったんだ。