第13章 encounter〜出会い〜
【雅紀】
Jが……
翔と二人でVIPに消えた。
俺には来るなと…
翔が居れば、俺のことなんかいらないと…
…………まさか??
こんなことが起きるなんて…
「座れよ」
ニノに言われて我に返った。
立ち尽くして
二人の背中を呆然と見つめる俺に、
周りの連中も見て見ぬ振りを決め込んだ。
……哀れな俺に、関わりたくなんかないのか?
それとも、心の中で笑っているのか?
膝の上で握った拳が、ワナワナと
可笑しいほどに震えて、
慌てて右手の拳を左で強く握った。
「ワインでも開けよっか~?」
そう言って立ち上がろうとするニノの手を、
俺は少し乱暴に引っ張った。
Boxに居る仲間は、それぞれ飲んで話したり、
フロアに出て踊ったりしていて、
俺たちは幸い、二人で話すことが出来る。
「お前はいいのかよ!?」
「いいのかって~?」
のんびりしたニノの口調が、
増々俺をイラつかせた。
「Jが、翔と…その…」
「セックスしても??」
「なっ//////」
ニノは、笑いながら、俺と自分のグラスに
ワインを注いだ。
「そう言う事でしょ?
雅紀が心配してるのは…」
「お前は、それでもいいのかよ?
Jが、翔と、そうなってさ…俺たちを…
えっと…俺とニノを……その…」
言葉を選び過ぎて、何を言ってるのか分かんなくなりそうな俺を、ニノは一笑してワインを煽った。
「……仕方ないよ…それならそれで…」
「ニノ!!」
「じゃあ、捨てないでって、Jに縋って泣くの??」
……それは……
そんな惨めなことは、したくない…
だけど……
Jが……
Jとニノとの時間と関係が、
今の俺を支えていたのに……
「ほら、飲めよ…」
ニノが無理やり押し付けて来たグラスは、
フロアのキラキラを反射して、
宝石よりも美しかった。