第13章 encounter〜出会い〜
「はい、どうぞ」
Jがドアを開けてくれた部屋は、
思ったよりもずっと広くて…
隅に大きなソファーがあって…
見ようによってはベッドにも見えるかな?
反対側には小さなバーカウンターが備え付けられていた。
後ろでドアの締まる音がすると、
静寂が、一気にその空間を支配した。
「し、静かだね…」
「防音は完璧だからね~」
「ふ、ふ~ん…」
Jにそっと背中を押されて、
俺は促されるまま手前の赤いソファーに腰を下ろした。
「何か飲むでしょ?」
「うん…」
「ハイボールでいい?」
「Jと同じでイイよ」
………手際よく、
二人分のハイボールを作るJの横顔を
じっと見つめた。
綺麗な…
男だけど綺麗だっていう表現しか思いつかなくて。
………
「…じゅん……」
グラスを二つ持ったJが俺の隣に座った。
「あ、いやっ…何でもない…」
聞こえてたはずだけど、Jは何も言わなかった。
「翔って塾の先生してるんでしょ?
子どもってどう?面倒くさくないの?」
「あ~、生意気な子もいるけどね~、
でもまあ、基本は頭のいい子たちだからね?
自分に不利なことはしないし、褒めればうれしそうにするし、可愛いよ~」
「そっか。翔先生、好きです、なんて、女子高生に告られてんじゃないの~?」
「え~??まあ、内緒だけどさ~…」
Jとの会話は、普通で…
普通に楽しくて。
現れるだけでclubの空気を変えてしまうようなカリスマとは、少し違う気もして…
「ねえ、その目…」
俺は、最初っから気になっていたことを、
思い切って切り出してみた。
「その目の色ってさ……」
「あ~、これはカラコン。綺麗でしょ?」
「うん…凄く似合ってるよ…」
「ふふふ、どうも。」
ホントに……そのパープルに、吸い込まれそうになる。
「翔ってさ…聞いてもいい?」
徐に、Jがグラスの氷を回しながら、
俺を見ないで言った。