第13章 encounter〜出会い〜
【翔】
Jの隣に座り、話をした。
Jは俺の学校のことや、
バイトのことなんかを聞いて来て…
見た目と違うその印象に、
始めのうちは戸惑ったけど、
『悪い人じゃない』
そう確信した。
それにしても、周りが賑やかで、
Jの声がよく聞こえない。
時間が経つと、ウィークデイだというのに、
人がどんどん集まって来て、
いつの間にかフロアも、咽返るような人いきれだ。
「話もよく聞こえないよね」
そう言うと、Jはどこかに電話を掛けてから、
「ゆっくり話せるところに行こうか?」
と言った。
「ゆっくり…?」
そんなつもりはなかったけど、俺、少し不安そうな顔をしたのかな?
Jは笑って、
「大丈夫だよ♪捕って食いやしないから」
耳元でそう言った。
「…うん…」
Jは俺の手を掴んで立ち上がり、
『奥に行く』と雅紀たちに伝えた。
雅紀は、それを聞き、一緒に立ち上がった。
俺たちと一緒に行こうって思ったんだろうね。
俺は別に、雅紀が一緒でもよかったんだけどさ…
Jが…
俺と二人で『奥』と呼ぶ、VIP Roomに行くといった。
その瞬間、雅紀の表情がさっと強張ったのが分かったけど、俺はJにどうしても確かめたいことがあったんだ。
だから、雅紀には悪いと思ったけど、
誰かに邪魔されないで、Jと話すために、
『ごめんね』と雅紀に謝った。
その場にいたみんなの、興味本位の視線を背中に感じながら、俺はJと二人っきりで、
『奥』の部屋へ向かった。
俺の肩に回された手に、
なぜだか心臓が跳ねるのを感じて、
俺はそっと拳を握った。
何度見ても、
間近で見ても、
Jは潤に瓜二つ。
どう見ても別人とは思えなかった。