第13章 encounter〜出会い〜
それをやきもきしながらも、
入り込めないでいる雅紀はともかく、
その隣にいる俺には、Jと翔が、何を話してそんなに和やかに意気投合しているのか分からなかった。
「俺、奥行くわ…」
徐にJがそう言って立ち上がった。
いつもなら、それはイコール俺と雅紀も引き連れて、
ということになるから、
雅紀はそれに合わせて立ち上がった。すると、
「今日は翔と話すから…」
………
Jは、そう言って雅紀の同行を遮り、
翔の手を取った。
………嘘だろ?
雅紀じゃなくても、俺も、周りも呆然とする。
奥のVIPで、俺たち3人が何をしているのか、ここに居る連中は言わないだけで知っているはずだ。
そこに翔を…翔だけを誘ったって言う事は…
呆然と立ちすくむ雅紀に気付いた翔は、
申し訳なさそうな顔をしながら、
「ごめんね、雅紀…ちょっとJと話したいんだ」
そう言った。
正直驚いた。
今までの彼の気遣いを見ていたら、
てっきり雅紀も誘うんだろうと思っていたのに、翔は、はっきりとJと二人になりたいと…
雅紀にそう言ったんだ。
雅紀のことだ。
翔にJのことかなり自慢してたんだろうし、翔も、そんな雅紀のこと分かってるはずだから…
気を使っても然り、
なのに……
戸惑いや驚きの面々を掻き分けて、
Jと翔は、肩を組んで俺たちの側を離れた。
「座れよ」
まだ馬鹿みたいに突っ立って居る雅紀の腕を掴んで、ソファーに座らせた。
「J…翔と?」
「ああいうのが好きだったか~?」
「翔って、ソッチ~?」
興味本位の囁きが俺の耳に届いたけど、
雅紀は茫然としたまま、
Jが残していったテーブルのコップをじっと見つめていた。