第13章 encounter〜出会い〜
【和也】
この間雅紀が連れて来た時は、
チラッと見ただけだったから、
大きく印象に残ってた訳でもないけど。
Jが招待したとなると話は別で、
俺は値踏みするように、その男を観察した。
柔らかそうな髪に、白い肌、
何よりも一番目を引くのは大きな目…
人の話を聞くときによく動くその瞳は、
もうそれだけで釘付けになる。
表情が良く変わるから、
その大きな目も、見開かれたり、顰められたり、
そんなつもりはなくても、見惚れてしまう。
ストレートに感情を表現し、
素直な言葉で話すせいか、それには嫌味が無くて、こんな場所にあっても、決して穢れない白いユリのようにも見えた。
雅紀……
これは完敗だよ。
翔は俺たちとは別の世界で生きて来た人間で、
そんな彼にJが魅かれたんだとしたら、
俺たちじゃあ、太刀打ちできないよ。
雅紀の顔を盗み見ると、
不安げに、一気に仲間内に溶け込んでしまった彼を見つめていた。
その時。
「よお」
Jが来た。
「今日は遅かったじゃん」
「来ないかと思ってたよ~」
「この前の女に刺されたんじゃね~の~?」
誰かの下衆い冗談に、その場は盛り上がった。
「奥、いい?」
Jはそんな言葉は無視して、当たり前のように翔と雅紀の間に座った。
「来てくれたんだね?」
Jは、俺や雅紀には目もくれず、
隣の翔に声を掛けた。
「え?ああ、うん…雅紀が誘ってくれたから…」
真っ直ぐに見つめるJのパープルに、
翔は若干狼狽えながらも笑顔で答えた。
それからまた、普通に賑やかに時間が過ぎる。
酔狂な宴は、表面上は何も変わらないように見える。
でも……
Jは、徐々に翔との距離を詰めるかのように、
煩い音楽に遮られてしまった振りで、
翔に耳打ちしている。
翔もそれに大きく頷いたり、
逆にJの耳に口を寄せて何か話している。