第13章 encounter〜出会い〜
「明日か~…友達とちょっと約束してるけど…」
「そっか、だよね!急には無理だよね~」
「うん…ごめん…」
内心ほっとしていた。
翔を連れて行かなければ、Jは機嫌が悪くなるかもしれない…もしかしたら、そのまま帰ってしまうかもしれない…
でも…
それでも、
翔をもう一度Jに会わせちゃいけない気がしてたんだ。
明確な理由がある訳じゃないけど。
何となく…胸騒ぎっていうか、
嫌な予感っていうか…
「じゃあ、残念だけどまた…Jには俺から言っとくよ!」
「J…?なんでJが??」
……しまった///
つい口が滑った。
Jのことは言わないでおこうと思ったのに…
「ねえ、雅紀…Jが、Jが俺を呼べって?」
「あ、いや…まあ、そんなことも、言ってた、かな~…」
翔はじっと一点を見つめて、
何やら考えていたけど、
「雅紀、俺行くよ!Asterisk…」
「えっ?でも、と、友達と…」
「Jにもう一度会いたいんだ!会って確かめたいことがあるんだよ…」
「………」
急に何だか嬉しそうになった翔…
まさか、翔も??
「あ、雅紀、明日何時?待ちあわせて行こうよ」
「……」
「駅でイイよね?」
………ニノ……ごめん…
俺、止められなかったよ…
翔が、Jのところに行くの。
翔が、どうしてあんなにJに興味を持ったのか分かんないけど…
多分翔はJに夢中になる…
俺がそうだったように、
Jには説明できない、
言葉では言い表せない、
不思議な魅力があるんだ…
一度それに捕らわれたら、
自力で抜け出すことなんかできやしない。
Jは蜘蛛だ。
綺麗な模様で獲物を誘き寄せ、
その綺麗な糸に捉えたら、
二度と離さない……
翔はさしずめ迷子の蝶…
来るべきところではない場所に迷い込み、
蜘蛛の巣の下を飛び回る……
糸に捕らわれるのも、時間の問題……