第13章 encounter〜出会い〜
それから、俺とJの奇妙な関係が始まった。
俺のアパートにふらっとやって来るJは、
その晩俺を抱いて、翌朝は帰って行く。
次の約束も、
愛の言葉もない関係……
それでも俺はよかった。
もっと若い頃、派遣ホストをやっていた。
まあ平たく言えばデリヘル…
しかも男専門の。
ソッチの方の主流といえば、
しっかりニューハーフの男の娘なんだけど、
俺みたいな、見た目普通の男が…
っていうのを希望する人も少なくなくて。
これでも結構人気で、
週末は予約が取りにくいくらいだった。
中には変なヤツや、
キモイこと要求して来るやつもいたけど、
金のためだと思って割り切っていた。
Jと出会って、Jが俺にどうかと見つけてきた仕事が、
『Asterisk』だった。
そこでバイトをする傍ら、
奥のVIP専用の部屋で、Jと関係を続けて来た。
知ってたよ。
Jに別の人がいるってこと。
時々、背中や首筋に
紅い痕を残してたからね~?
俺じゃない誰かと、
そういう事してるんだって…
分かっていても、それを問い詰めたり、
誰と寝てるの?
何て聞くこともしなかった。
Jとの甘い情事の最中、
肩の紅をそっと撫でてみても、
Jは全然気付くことはなくて…
俺は、Jのその痕の向こうにいる人を
想像してみるけど……
それが、男なのか、女なのかさえ、
全く見えてはこなかった。
気にならないかって言ったら嘘になる。
俺が、所謂『そう言う事』をするのは
今はJだけだし、
身体で稼ぐこともしなくなったし…
そんな俺とJとの中に、
入ってきたのが雅紀だった。
俺のアパートでセックスした後、
「今度さ、紹介したいやつがいるんだ。
Asteriskで会せるよ」
寝落ち寸前のJが、そう言った。
俺は何も言わず、
Jの綺麗な横顔を見つめていた。
携帯を見ながら、
俺のことなんか見ない、Jの顔を……